こんにちは。 今日は少し懐かしいお話から始めさせてくださいね。
1980年代から90年代にかけて、私たちの日常には、 洋楽が自然と溶け込んでいました。 マイケル・ジャクソンの『Thriller』や、 ワム!の『Make It Big』といったアルバムが、 オリコンの年間チャートで上位に名を連ねていたんです。 テレビやラジオからも、 当たり前のように英語の曲が流れていて、 それを真似て口ずさむことさえも、楽しい日常の一部でした。
でも、今はどうでしょう?
最新のビルボード・ジャパンの年間チャートを見ても、 洋楽がほとんど姿を消してしまいました。 かつては3割近くを占めていた洋楽の存在感は、 今ではわずか0.3%。驚くほどの減少です。
その背景には、いくつかの理由があるようです。
まず、邦楽アーティストたちの進化があります。 制作のレベルが格段に上がり、 ポップスもロックもアイドルも、 どのジャンルも高品質な楽曲が次々と生まれています。 アニメとJ-POPが手を取り合い、 ヒット曲を生み出す仕組みも定着してきました。 今の若い世代にとっては、 耳にする音楽の多くが日本語の歌なんですね。
それに加えて、K-POPの存在も大きいです。
K-POPは、英語を織り交ぜた歌詞に、 完璧に揃ったダンスやビジュアル、 そしてSNSを駆使した発信力で、 多くの若者たちの心をつかんでいます。 TikTokやYouTubeで拡散される ミュージックビデオやダンスチャレンジ。 それらは、音楽を「体験」することを前提としたスタイルなんです。
日本市場においても、 K-POPは長年かけてしっかりと根を張ってきました。
BoAさんや東方神起が活躍したころから、 韓国の大手事務所は日本語での歌唱や 現地メディアへの出演といった “ローカライズ”を積極的に行ってきました。 今ではテレビの音楽番組やバラエティ番組に K-POPアーティストが出演するのも当たり前になり、 ラジオでも専門番組が増えています。 さらに、KCONのような大規模イベントでは、 ファンが直接アイドルと触れ合う機会まで用意されています。
このような環境の中で、私たちの耳は、 次第に洋楽から遠ざかっていったのかもしれません。
英語の歌詞は意味が取りづらい、 CD文化の名残が強くデジタル世代とは相性が悪い、 という指摘もあります。 でも、それだけではない気がします。
今の音楽業界では、音楽そのものよりも、 タレント性やプロモーション力が 重視されるようになってきています。
芸人さんがフェスを主催したり、 アイドルが毎週ライブ配信をしたり。 そういう“つながる場”があることで、 ファンは音楽以上の何かに惹かれていく。 それは決して悪いことではありません。でも──
昔、深夜のラジオでふと耳にした一曲に、 心を奪われたような感覚。
街角の有線から流れてきたメロディに、 立ち止まったあの瞬間。
そんなナチュラルな出会い方が、 今ではとても難しくなってしまったように思います。
“音楽が人を引き寄せる”のではなく、 “人が音楽を探しにいく”。それが今の時代。
私たちは本当に、音楽を愉しんでいるのでしょうか?
それとも、“ミュージシャンのように見えるタレント”を応援して、 自分の感情を満たしているだけなのでしょうか。
どちらも、間違いではないのかもしれません。
でも、あの頃のように、音楽そのものに心を奪われるような体験。
もう一度、そんな出会いを求めてもいいのかもしれませんね。
時代が変わっても、音楽はきっと、 私たちの心を動かす力を持っているのですから。