広告費ゼロで音楽を広めるための戦略

どうも、音楽クリエイターの皆さん。 今回はあなたの音楽活動の、隣のドアをそっと開ける、 そんなお話をしましょう。

さて、SoundCloudやSNSに 楽曲をアップしている皆さん…経験ありませんか? 新曲を公開した途端に、海外から届く大量のメッセージ。 「あなたの曲は素晴らしい!私たちのネットワークでプロモーションしませんか?」 「10万回再生を保証します!」 …なんていう、甘い誘いのメール。

嬉しい反面、 「これって本当に効果あるの?」 「もしかして、詐欺じゃない…?」 って、不安になりますよね。

今日のテーマは、まさにそれです。 広告費ゼロで世界へ!そのプロモーション、本当に必要ですか?

怪しいプロモーションメールの罠から、 自分の力で国内外のリスナーに音楽を届けるための、 超具体的な戦略まで。今日の放送を聴けば、 あなたのプロモーションに対する考え方が、きっと変わるはずです。


まず、結論から言いましょう。 内容が不透明なプロモーションサービス、 特に「再生数だけ」を保証するようなものに、 安易にお金を払うのは、賢明な判断とは言えません。

なぜか?その実態のほとんどは、 「ボット」と呼ばれる自動化プログラムが、 機械的に再生数を増やしているだけだからです。

考えてみてください。10万回再生されているのに、 「いいね」やコメントが数件しかない…。 そんな不自然な状態は、 リスナーや業界関係者からすぐに見抜かれます。 それは、あなたのアーティストとしての 信頼を失う行為に他なりません。 最悪の場合、SoundCloudの規約違反で、 楽曲削除やアカウント凍結のリスクだってあります。

なにより、ボットが再生しているだけでは、 あなたの音楽を本当に好きになってくれる 「本当のファン」は、一人も増えないんです。

僕たちが本当に欲しいのは、 見せかけの数字でしょうか?…違いますよね。

たとえ100回の再生でも、 その中の10人が「この曲、最高だ!」って心を震わせて、 ライブに足を運んでくれたり、 次の新曲を心待ちにしてくれる…。 そんな「質の高い繋がり=エンゲージメント」こそが、 僕たちの活動を支える本当の財産になるはずです。

だから、甘い営業メールが来ても、一度立ち止まってください。 そのお金と情熱は、もっと確実で、もっと価値のある方法に使いましょう。

じゃあ、どうすればいいのか?

ここからが本題です。 受け身のプロモーションから、攻めのPRへ。 その最強の武器が**「持ち込み」**です。


「持ち込み」…つまり、 音楽ブログやWEBメディア、 プレイリストのキュレーターに、 自分から直接アプローチする方法です。

「そんなこと、プロのミュージシャンがやることじゃないの?」 って思うかもしれません。 でも、今やインディーズアーティストこそ、 これを戦略的にやるべき時代なんです。

なぜなら、第三者であるメディアが 「この音楽は良い」と評価してくれることで、 単なる広告よりもはるかに強い**「信頼性」**が生まれるから。 あなたの音楽に「ストーリー」という付加価値が生まれ、 今まで届かなかった熱心な音楽ファンにリーチできるんです。

ただし、闇雲にメールを送りつけても、 迷惑メールフォルダに直行するだけ。 成功確率を上げるには、 「戦略」と「熱意」、そして「相手への敬意」 が必要です。

成功へのステップは3つ。

ステップ1:準備編。「武器」を揃える。

これはあなたの「公式資料」、**EPK(エレクトロニック・プレス・キット)**を作りましょう。Google Driveなんかに、アーティスト写真、プロフィール、そして楽曲がすぐに聴ける限定公開リンクをまとめたフォルダを用意するだけ。これでOKです。

ステップ2:調査編。「狙い」を定める。

これが一番大事です。自分の音楽性に似ているアーティストは、どのメディアで紹介されていますか?あなたが普段チェックしている音楽ブログはどこですか?そこを徹底的にリサーチして、「ここなら自分の音楽を分かってくれそうだ」というメディアのリストを作るんです。

ステップ3:実践編。「熱意と敬意」を込めてアプローチ。

メールのテンプレート、コピペは絶対に見抜かれます。本文には、なぜ、数あるメディアの中から**「あなたに」**送ったのかを、具体的に書きましょう。

「以前レビューされていた〇〇の記事を拝見し、私の音楽性とも通じる部分があると感じ、ぜひ一度ご試聴いただきたく…」

こんな一文があるだけで、相手の心象は全く変わります。返信が来なくても、落ち込まないこと。それが基本です。

さあ、国内での戦い方が分かったら、次はいよいよ、その音楽を世界に届けにいきましょう!


「日本のインディーズなんて、海外で通用するわけ…」なんて思ってませんか?

そんなことは全くありません。今、世界はかつてないほど日本の音楽に注目しています。

特に、海外へアプローチする際に有効なジャンルがいくつかあります。

一つは、言葉の壁を越えやすいインストゥルメンタル音楽

toeやLITEに代表される日本のマスロックやポストロック。そして、Nujabesの影響もあって世界的人気のLo-fi Hip Hop。こうしたジャンルは、音だけで勝負できる強い武器になります。

もう一つは、日本のカルチャーと強く結びついた音楽

世界的なリバイバルヒットになったシティ・ポップや、ゲーム音楽、アニメソングの文脈を持つサウンド。これらは「日本ならでは」のフックとして、海外のファンに非常に響きやすいんです。

そして、海外へ持ち込む際に絶対に守ってほしいポイントがあります。

それは、完璧な英語でのコミュニケーションです。

プレスリリースやメールは、翻訳ツールをそのまま使うんじゃなく、できるだけ自然な英語を心がけてください。そして、時差も考慮して、相手の国の朝の時間帯にメールを送る。そんな小さな配慮が、大きな差を生みます。

じゃあ、具体的にどこに送ればいいのか?

いきなり、海外の超有名メディア『Pitchfork』とかを狙うのは、ちょっと無謀かもしれません。

まず狙うべきは、インディーズ音楽の発掘に熱心なメディアです。

アーティストが音源を直接販売できるプラットフォーム**『Bandcamp』。ここの公式ブログ『Bandcamp Daily』**は、世界中のニッチな音楽を紹介していて、日本のアーティストが取り上げられることも多いです。まずは、ここに載ることを目標にしてみましょう。

また、**『SubmitHub』**というサービスを知っていますか?

これは、少額の料金で、世界中のブロガーやプレイリストのキュレーターに、確実に楽曲を聴いてもらえるプラットフォームです。自分の音楽が海外でどんな反応をもらえるのか、市場調査として使ってみるのも、すごく有効ですよ。


さて、今回の話をまとめると…

謎のプロモーションメールに惑わされず、まずは無料でできる地道な活動に力を入れること。

そして、その先に飛躍を求めるなら、自分の音楽を本当に評価してくれるであろう相手を徹底的にリサーチし、戦略と熱意を持って「持ち込み」を行うこと。

これは、時間も労力もかかる、本当に地道な作業です。でも、そうやって勝ち取った、たった一つの好意的なレビューや、一つのプレイリスト掲載が、あなたの音楽人生を劇的に変えることだってあります。

それは、お金で買った空虚な再生数とは全く価値が違う、本物の成果です。

あなたの素晴らしい音楽が、それを待っている世界中の誰かの耳に届くことを、心から願っています。

今回はこのへんで。また次回の放送でお会いしましょう。


この記事は、Podcast番組「RADIO441」で配信された内容をもとに編集・再構成したものです。

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