皆さん、こんにちは。
今日は、なんだか不思議な、 でもとっても興味深いお話をしてみたいと思います。
最近、音楽の世界で「AIが作った曲」が 大きな話題になっているのをご存知でしょうか? 例えば、今年の夏にSpotifyに突然現れた The Velvet Sundownというバンド。 メンバーは謎に包まれていて、AIが生成したようなビジュアル、 ちょっと不自然なバイオグラフィー、 そしてあっという間に再生回数が急上昇したんですって。
実はこのバンド、後にRolling Stone誌の取材で、 一部の楽曲がAIで生成されたもので、 これは「芸術的なトローリング」、 つまり「社会実験」として仕組まれたものだったと明かされました。 なんだかSFの世界みたいですよね。
でも、AIで作られた音楽が話題になるのは、 これが初めてではないんです。 中には、収益目的ではなく、私たち人間が音楽とどう向き合うかという、 とっても深い問いを投げかけているケースもあるんですよ。
例えば、The Velvet Sundownが注目されたのは、 単にAI楽曲だったからだけではありません。 彼らが 本物らしさを一生懸命に演出し、 そしてSpotifyという今の音楽の舞台が、 その演出をそのまま受け入れた、という構図も大きかったんです。
過去には、AventhisやThe Devil Insideといったアーティストも、 AIで生成した音源をSpotifyに投稿して、 たくさんの再生回数を記録しています。 彼らは、まるで本当にアウトロー・カントリーの ミュージシャンがいるかのような、 そんな それらしい音楽をAIで精巧に再現したんですって。 特に Aventhisは、David Vieiraという一人の人物が すべての曲の作者としてクレジットされていて、 本人が「歌詞以外はAIです」と認めたことで、 さらに注目を集めました。
こうしたアーティストが 本物なのか 偽物なのかという問いは、 私たちが普段感じている音楽体験そのものや、 Spotifyのようなプラットフォームのあり方を 揺るがすような出来事になっていますよね。
もちろん、中にはAIを使って不正に収益を得ようとする、 残念な事件も起きています。 2024年にアメリカで摘発されたMichael Smithという人物は、 何十万ものAI生成曲をSpotifyに投稿し、 ボットを使って何十億回も再生させ、 なんと1,000万ドル以上もの大金をだまし取っていたそうです。 これは明確な「不正行為」です。
ただ、この事件で問題になったのは、 AIが不正を働いたわけではなく、 ボットを使って再生回数を水増ししたことなんです。 実は、こういう水増し行為は、 これまでも何度も繰り返されてきていて、 監視が強化されてきた歴史があるんですよ。
短時間でたくさんの曲が作れる というAIの特性が悪用されたわけですが、 たとえ膨大な数の楽曲を配信登録したとしても、 必ずしも大きな利益が得られるわけではない、 ということも知っておいてほしいんです。 例えばSpotifyでは、1年間に1,000回以上再生されないと、 その曲の収益は得られない仕組みになっています。 無名のアーティストの曲が年間1,000回再生されるのは、 実はとても難しいことなんです。 それに、仮に達成したとしても、 得られる収益は数百円にも満たないくらいなんですって。
今回の The Velvet Sundownのように、 爆発的に再生回数を増やしたとしても、 不必要な注目を集めて批判される可能性も高まりますから、 収益だけを考えるなら、決して得策とは言えないでしょう。
つまり、AIが作った曲であろうと、 生身の人間が作った曲であろうと、 お金のためだけに不正な方法で再生回数を水増しするのは、 あまり賢いやり方ではない、ということですね。
実際、 The Velvet SundownやAventhisのように、 限られた数の楽曲を 意図的に目立たせるというやり方は、 収益性よりも 表現や 実験としての側面が強いんです。 その背景には、 AIがどこまで人間の表現を模倣できるのか、 あるいは超えられるのか、という問いや、 それに対する社会の反応を見てみたい、 という目的があるのかもしれません。
世の中では、もうすでにボーカロイドやVTuber、 そして初音ミクが証明しているように、 バーチャルな存在がアーティストとして活動することは、 当たり前になっていますよね。 もし音楽の本質が「体験」そのものだとしたら、 それが実在するかどうかよりも、 何を感じさせてくれたかが問われる時代になってきているのかもしれません。
AIが歌い演奏し、実在しないアーティストであっても、 同じことが言えるのではないでしょうか。 制作プロセスに違いはあっても、人が作り出したものであって、 AIが勝手に作り出したわけではないのですから。
ただ、AIで作られたバーチャルミュージシャンがどんどん増えていくと、 中の人や クリエイターの倫理が曖昧になって、 誰が責任を取るのか分からなくなる、というリスクもあります。 情報が透明でないまま、再生回数や評価だけが先行してしまうと、 リスナーとの信頼関係が崩れてしまったり、 音楽そのものの価値が空っぽになってしまったりする恐れもあるでしょう。
でも、一方で、AIの登場によって、 新しいクリエイターが増え、ジャンルや人種、地域を超えた、 今までになかったような音楽が生まれる可能性も秘めているんです。
すでに、AIを使ったバーチャルなアーティストが、 Spotifyのリスニングチャートに 正体不明のアーティスト としてランキング入りし始めています。 まだまだネガティブな意見や報道が多いのは事実ですが、 AIが作ったバーチャルミュージシャンが、 今後、商業的にも文化的にも成功を収め、 音楽賞を獲得する未来も、十分にあり得ると思うんです。
生成AIによって音楽が簡単に作れるようになった今、 誰が作ったかではなく 何を私たちに届けてくれたかが 問われる時代になってきています。 でも、その背景には、技術、倫理、ビジネス、文化 といった複雑な要素が絡み合っていることを忘れてはいけませんね。
私たちは、AIか人間か、という単純な対立で見るのではなく、
音楽という表現がどこまで可能性を広げられるのか という視点で、これからのバーチャル音楽シーンを 見つめ直す必要があるのではないでしょうか。
あなたはこの新しい音楽の波を、どのように感じますか?