音楽生成AIの未来と音楽界の葛藤

こんにちは、皆さん。 今日は、最近の音楽界で話題になっている 音楽生成AIについてお話ししたいと思います。 昨年から、音楽生成AIを批判する声が高まっていますが、 その背景にはどのような事情があるのでしょうか?

特に、sunoやudioといったAIが注目されています。 これらの技術は、伴奏と歌唱を一括して生成できるため、 完パケの楽曲が簡単に作れるという魅力があります。 しかし、その一方で、 音楽界からは「人間の創作物とは呼べない」 といった懸念が生まれています。

音楽生成AIが登場したのは2010年後半。 SoundrawやAmper Music、AIVA、Ecrett Musicなどが 主に伴奏やトラックを生成するために開発され、 これらは主にBGMや仮トラック制作に利用されてきました。 特に、EDMやHipHopの音楽制作がDTMに移行する中で、 AIによるリズムパートやフレーズの生成は 新たなアイデアとして重宝されてきたのです。

この過程では、AIがどのような情報を学習しているかは あまり問題視されていませんでした。 人間が選択し、編集することが前提とされていたからです。 しかし、sunoやudioが登場すると、 簡単な指示だけで音楽を生成することが可能になり、 「人間が作る音楽とは言えない」という意見が広がりました。

この批判には、二つの視点があります。 まず一つ目は、 創作は「意図・感情・経験の表現」であるという考え方。 二つ目は、商業音楽の分野でAIが 品質やコスト効率で優位に立つことで、 「必要とされなくなる」という恐れです。

ここで注目したいのが、Boomyという音楽生成AIです。 Boomyは、伴奏を生成するだけでなく、 ユーザーが自分の歌を載せて、 音楽配信サービスに直接アップロードできるという特長があります。 2019年に開始されたBoomyは、 2023年時点で1,440万曲以上の楽曲を生成し、 多くの楽曲がSpotifyやApple Musicなどの 主要なストリーミングサービスで配信されているとのことです。 実際、Spotify上の全楽曲の約7%を占めていたという報告もあり、 Boomyが生み出す音楽がどれほど広範囲にわたるかがわかります。

しかし、昨年、一斉に削除されたAI楽曲の多くが Boomyのものであると言われています。 この大量削除事件は、音楽業界に危機感をもたらしましたが、 Boomyの存在自体が問題視されることはありませんでした。 なぜなら、歌唱部分に人が介在していることで、 創作物として認められていたからです。

このように、音楽生成AIへの批判は非常に観念的であり、 否定する根拠としては脆弱です。 実際、作曲家や演奏家は先人の作品を模倣し、 そこから自分のスタイルを作り上げていくものです。 子どもが音楽を聴きながら 自然にリズム感やメロディの構造を吸収するように、 AIもまた音楽文化を学ぶ存在なのです。

もちろん、すべてのアーティストが 音楽生成AIを否定しているわけではありません。 例えば、グライムスは自らの声を使ったAIボーカルツールを公開し、 「人間の作曲家はAIに勝てない」と発言しています。 また、ティンバランドはAIを使って故・2Pacのラップを復元するなど、 AIとの共作に前向きです。

このように、 AIを積極的に活用するアーティストも増えてきています。 音楽生成AIの問題は、 音楽制作の考え方や創作物への考え方の違いであり、 学習データの問題はその本質とは関係がないのかもしれません。

音楽の未来は、伝統的な手法と新しい技術が共存し、 進化していくことにあるのではないでしょうか。

次回は、AI時代にミュージシャンや音楽の価値が どのように変化していくのかを考えてみたいと思います。

上部へスクロール